希望の灯り ドイツ映画

監督: トーマス・ステューバー(Thomas Stuber)
上映年: 2018年(日本公開 2019年)
主要俳優: フランツ・ロゴフスキ、ザンドラ・ヒュラー、ペーター・クルト
評価: ★★★★

感想

この映画で一番おもしろいと思うのは、職場を恋愛の舞台にしたことではなく、職場しか舞台がないことです。

クリスティアンとマリオンには、二人きりで会える場所がありません。喫茶店も、車の中も出てこない。あるのは休憩室のコーヒーマシンと、棚と棚のあいだの通路だけです。だから二人の距離は、言葉ではなく何メートル離れているか、どちらが先に目を逸らすか。

会社という場所は本来、人の事情を持ち込まない約束でできています。この映画の従業員たちは、その約束を律儀に守っている。だからこそ、マリオンがふと暗い顔をしたときに、クリスティアンは戸惑うことしかできない。踏み込んでいいのかがわからないからです。
切ないのは気持ちが通じないことではなく、どうにもできないこと

また、旧東ドイツという土地の選び方がナイスチョイス!ブルーノはかつて長距離トラックの運転手で、いまはフォークリフトに乗っている。彼にとって、あの巨大なスーパーは、なくなった国の代わり、この映画でザンドラ・ヒュラー、この女優さんと出会えたのは素晴らしかった。最近ではプロジェクトフロムヘイリーに出演しています。

あらすじ・概要

舞台は、旧東ドイツ・ライプツィヒ近郊の田舎町にある巨大スーパーマーケット。

無口な青年クリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)が、在庫管理係として働きはじめます。首まで入った刺青を作業着で隠し、過去について多くを語らない男です。飲料部門のブルーノ(ペーター・クルト)が仕事を教え、フォークリフトの動かし方を仕込んでいきます。

菓子売り場の担当がマリオン(ザンドラ・ヒュラー)。年上の、既婚の女性です。休憩室のコーヒーマシンの前で言葉を交わすうちに、クリスティアンは彼女に惹かれていきます。

閉店後の店内は、昼間とは別の場所になります。照明が落ち、誰もいない通路にフォークリフトの音だけが響く。その音を、ブルーノは海の音だと言います。旧東ドイツ時代、彼は長距離トラックの運転手でした。

従業員たちは、それぞれ心に痛みを抱えながら、互いに立ち入りすぎない距離を保って働いています。クリスティアンがマリオンに近づいていくことで、その均衡が少しずつ動きはじめる――。

原作は、クレメンス・マイヤーの短編『通路にて』(新潮社『夜と灯りと』所収)。マイヤー自身、ライプツィヒで工事現場や倉庫の仕事をしていた人です。作中の手つきが具体的なのは、そのためかもしれません。

第68回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品され、フランツ・ロゴフスキはこの作品でドイツアカデミー賞の主演男優賞を受賞しています。上映時間は125分。

こんな人におすすめ

  • 大きな事件が起きない、静かな映画に浸りたい人
  • 働いている場所の空気が、そのまま映っている映画が好きな人
  • ザンドラ・ヒュラーやフランツ・ロゴフスキを、別の顔で見てみたい人
  • 何も起こらない時間を、ゆっくり過ごしたい夜に

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